大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和24(れ)3004 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人田渕久米治の上告趣意について。

原判決挙示の被告人の原審公判廷における供述、第一審第一回公判調書中の被告

人の供述記載、被告人に対する検事の聴取書中の被告人の供述記載、Aの始末書中

の記載、Bに対する検事の聴取書中同人の供述記載、Cの始末書中の記載、地方技

官Dの鑑識報告書中の記載及び証第二号の存在等を綜合すると、原判示の殺人未遂

の事実認定を肯認することができるのである。ことに、被告人が判示のごとく中毒

のため死亡する虞のあることを予見していたこと、判示饅頭一個に挿入した猫いら

ずは、有害燐である黄燐であつて、その分量は大豆一粒大くらいであつたこと、並

びに、被告人が被害者Bに手渡したのは右分量の猫いらずの入つた饅頭一個であつ

て,Bの食べたのはその全部ではなく、半分に過ぎなかつたこと及びBが死亡する

に至らなかつたのはそのためであつて、手当の如何には関係なく、また、右食用の

結果被害者は間もなく吐気を催し且つ直ちに手当した後約一週間腹痛があつただけ

であつたこと等を認めることができるのである。そして、右のごとき分量の猫いら

ずを服用するにおいては、服用者の身体的状況等に因つて中毒のため死亡の虞ある

ことは顕著な事実であるから、これを予見しながら被害者に判示饅頭一個を手渡し

た行為を以て殺人行為なりとした原判決は、正当であつて、原判決の認定には、実

験則に反し又は採証の法則を無視した違法は認められないし、また、原判決の理由

には欠くるところを見出すことはできない。されば、所論第一点は、結局原判決の

採用しない証拠に基く独自の事実見解による原判決の認定非難に帰し、また、同第

二点は、原判決の認定に副わない主張であつて、いずれも採用することはできない。

よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、裁判官全員一致の意見で主文

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のとおり判決する。

検察官 安平政吉関与

昭和二七年一二月一八日

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

裁判官 真 野 毅

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官沢田竹治郎は退官につき署名押印することができない。

裁判長裁判官 岩 松 三 郎

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